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外科室

泉鏡花の短編小説を坂東玉三郎が監督・映画化した「外科室」を見ました。
  (ネタばれあります)

レンタルビデオの○SU○A○Aではなく
地元のF市図書館の映像資料に「外科室」のレーザーディスクがありました。

自分は普段ほとんど図書館を利用したことがなく
1階受付でまず利用者登録カードを作成し、2階の視聴覚室で
ヘッドフォーンつけて見ました。

もともとの小説は文庫本で20ページもなく、台詞も少ない。
これを50分の映像にしているので小石川植物園の美しい映像が
かなり出てきます。
全体を通してカメラの動きも俳優の演技もとてもゆったり。

冒頭の「外科室」というタイトルが満開の桜をバックに出てきますが
ここで、ラフソナの1楽章のイントロがこの物語で悲劇的な結末を
暗示しているかのように流れます。

カメラが満開の桜の花びらがひらひらと散るさまを、写していくのですが
レンギョウの黄色と桜のコントラストがとても美しい。

吉永小百合は伯爵夫人を演じています。
この伯爵夫人が小石川植物園の満開のツツジを夫・家族と見物にきますが
ここで医学生高峰(加藤雅也)とすれ違い、お互い一目ぼれしてしまう。

9年後に伯爵夫人が胸部の手術をすることになる。
執刀医は高峰。

麻酔をかけなきゃならないが夫人はこれを拒絶。

夫人は
「私はね、心に一つの秘密がある。ねむりぐすりはうわごとを申すから、それが恐くてなりません」
と語る。

麻酔をかけられれば、自分がうわごとで
高峰を9年間も恋焦がれていたことをしゃべてしまい、皆に知られるのが恐い。
知られるぐらいなら死を選ぶ。

麻酔なしでの手術が始まり、高峰が夫人に問う。
高峰:「痛みますか?」
夫人:「否(いいえ)、(手術しているのが)貴方だから、貴方だから」

このあと夫人は突然身をおこし、メスを自分の胸にさして
高峰に抱かれながら自害する。
このシーンからラフソナ3楽章の後半の3連符からが流れます。

手術室でのシーンのあとは9年前の二人の出会い回想場面がずっと続きますが
小石川植物園の新緑の緑とツツジのコントラストが本当に美しい。

吉永小百合も加藤雅也も台詞は意外に少なく
お互いがじっと相手を見つめあうシーンがアップで写されます。

一度目をかわしただけでお互いが恋に落ちた医学生と伯爵夫人。
9年後に執刀医と患者という立場で再会するのですが、
この恋をおたがいが口にすることもなく恋に殉じる、という物語。

最後のエンドロールでラフソナ3楽章が沈む夕日をバックに
甘く切なく流れるのです。

以下は自分の勝手な推測。

「玉三郎はこの映画を企画した段階でBGMをラフソナにしようと
決めていたのかどうか疑問。
というのもヨーヨーマとアックスのラフソナがリリースされたのは1991年10月25日。
で、この「外科室」が公開されたのは1992年だから、映画作成を決定した時点では
まだマ様のラフソナを聞くことはできない。
当初企画の段階ではちがう音楽をBGMに考えていたのではないか?
映画作成の過程でマ様のラフソナが発売され玉三郎がこれを聞き、
マ様の演奏がこの映画にまさにぴったりだったのでBGMにしたのではないか。」

真相は玉三郎ご本人にたずねてみるしかないですね。

by hideonoshogai | 2008-09-21 16:27 | その他 | Comments(4)  

Commented by ローズ at 2008-09-21 21:39 x
映画を見ることができて良かったですね。
内容と映像と音楽がこれほど美しく絡み合う映画というのも、珍しいのではないでしょうか。
私も久しぶりに録画を見ることにします。
Commented by hideonoshogai at 2008-09-21 22:57
こんばんは。おかげさまで、やっと念願の映像を見ることができました。ほんとに美しかった。ラフソナが見事に映像にマッチしてましたね。あの美しい映像にはやはりマ様の演奏でなければならないと思いました。
いろいろ教えていただきありがとうございました。
Commented by スパン at 2008-09-22 00:22 x
この映画の公開に際して吉永小百合がインタビューで
たしかこんなことを言っていました。
「侍女や下男達に向かって“お前達”と呼ぶような伯爵夫人の
 そういうゴツい感じを表したいですねと、玉三郎さんと話をして、
 照明の薄暗さなど細かいところで、その時代の爵位にあった人々の
 気高さを表すことを追求した」と、そんなような内容でした。
ご覧になれたようで良かったです。
ネタバレにつながるので↑「」の内容は今だから明かせます。
Commented by hideonoshogai at 2008-09-22 23:57
手術室で伯爵夫人が純白の手術着で横たわっているシーン。
侍女が麻酔薬を飲んでくれるよう懇願するところで
伯爵夫人の「なにかい、ねむりぐすりをかい。」の台詞はドスがきいているというか、それまでの雰囲気とは全然ちがった言い方だったのでびっくりしました。

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