当時は、多重録音に初挑戦で何度も試行錯誤しながらの録音でした。
あの演奏は伴奏が、本来の平均律クラヴィア集のプレリュードではなく
無伴奏チェロ組曲1番プレリュードで調性も元々のC durより4度低いGdurです。
前回のアヴェマリアをアップした時から、いつか本来の調性のアヴェマリアに
チャレンジしてみたいと思っていました。
しかし平均律クラヴィア集・プレリュードの
あの美しい16分音符の分散和音をピアノではなくチェロで軽やかに弾くのは
至難の技と思って半ば諦めていました。
そんな時、ネットで偶然、David Johnstone のアレンジを見つけました。
平均律クラヴィア集のプレリュードをチェロ伴奏とするチェロ2重奏版のアヴェマリアです。
また、当時は無料で譜面をダウンロードできました(現在は有料のようです)。
この譜面では伴奏がずっと八分音符の分散和音になっており、それほど難易度は高くありません。
しかし、いざ、2番チェロを弾いてみると、分散和音の跳躍が大きく
ポジション移動が半端でありません。
一定のテンポでなかなかスムースに弾くことができません。
譜面では四分音符=120の指示がありましたが、
それでは流石に早すぎるので四分音符=60で録音してみました。
伴奏を聴きながら上を弾きますが何度弾いてもしっくり行きません。
ならば上のメロディーをまず自由に弾いてそれに伴奏をつけてみようと
思いたち旋律を録音しました。
写真:毘沙門沼(福島県)
しかし、旋律を聴きながら伴奏を付けるこの方法はやはり無理でした。
付点二分音符が多くテンポが微妙にずれているので、
何度やっても上の旋律に伴奏をうまく付けることができません。
旋律に伴奏を付ける方法は、すぐに挫折です。
とういうことで、もう一度「多重録音はまず細かい音符から録音」という原則に戻りました。
伴奏を録音し、それを聴きながら上を弾きました。
さらにテンポを落とし四分音符=57ぐらいで弾き、この伴奏に上を合わせたのが
今回の録音です。
音程がずれていたり、高い音で苦しそうに聞こえたり、とまだまだ課題は
沢山ありますが、現時点の記録としてアップします。
「大きく豊かな音を出したい時こそ、力まず力を抜いて弾くこと」といつも
師匠に言われていますが、未だにそれを実践できずにいます。
写真:鶴ヶ城(福島県会津若松市)