マリオ・ブルネロ 印象記

10月9日(火曜)にマリオ・ブルネロの
無伴奏リサイタルを聞いて来ました。
最寄駅のJR錦糸町へ着いたのが18:29。
墨田トリフォニーまでは徒歩5分ほど。
入場し席についてあたりを見回すと、まだ2割も入っていません。
席は前から4列目。しかもほぼ中央なので、ブルネロを
ばっちりかぶりつきで眺められる位置です。
ブルネロをライブで聴くのは今回が初でしたから、どんな演奏が
聞けるか期待が高まります。

19:00過ぎになっても、まだお客さんがどんどん入場してきます。
実際に演奏が始まったのは19:08分ごろ。

ブルネロはマッジーニを軽々とかかえて颯爽と登場しました。
ジャッケットは着用せず、紺色のスタンドカラーのシャツ一枚です。

席につくなり、英語で最初の曲について解説がありました。
最初の曲は、ツィンマーマンのソロ・チェロのための4つの短い練習曲。
1曲目は「water and air」
2曲目は「water and fire」
3曲目は「steel」
そして4曲目が「spirit」
どれもすごく短い曲で連続して演奏すること、また、作曲者の
ツィンマーマンがこの曲を作曲した直後に自殺したことを話されました。

演奏が始まると確かに短い曲でどれも1分ほど。
最後の「spirit」が特に印象深かったのですが
どんな旋律かは思い出せません。

そのあとにバッハ2番のプレリュードが
厳かに奏でられました。

当初の解説で「バッハも連続して弾きます」とおつしゃられたそうですが
自分は「練習曲4曲を連続して弾きます」と聞き間違えていたので、
ツィンマーマンが練習曲にバッハ無伴奏の主題を引用したのかと勘違いしてしまいました。

それほど自然に「spirit」に続いて2番のプレリュードが始まったのです。
とてもゆっくりと静かに、おそらく今まで聞いたバッハの中で一番遅いテンポで。
でも、まったく不自然ではなくゆたかな響きがどんどん拡張していくのです。

プレリュードの最後5小節の重音。
ここでは、譜面どおりではなく、1番のプレリュードのように
アルペジオーネにアレンジして弾かれました。これも初めて聞く
アレンジでしたが、プレリュードの演奏がこれで終わってしまうのを
愛惜するような、もの哀しい響きでした。

クーラントは凄い速さで疾走するように弾かれましたが
それ以外の4曲は全体にとてもゆったりしたテンポでした。

2番のプレリュードの後に休憩がくるかと思ったら
すぐに3曲目の
ソッリマのラメンタチオが始まりました。
これもまったく初めて聞く曲でした。

ゆったりとした序奏を弾きながら、ブルネロが歌います。
はっきりとした旋律はなく半音ずつ微妙に音程があがったりさがったり。
途中からめまぐるしく荒々しい展開になります。
重音で激しいパッセージを弾きながら左手でピチカートいれたり
指板を左手で叩いて音をだしたり
そんな激しい舞曲のような変拍子の部分がおわると
また最初の穏やかな序奏にもどり、曲がおわります。

ブルネロのマッジーニは1600年代の楽器なので
それほどパワーはありませんが、渋く枯れた独特の音です。
G線の開放弦のときにちょっとビリツキがあるようにも
聞こえたのですが、もともとそういう音の楽器なのかもしれません。

休憩時には席を離れずにいました。しばらくすると
Shinovskyさんからお声をかけていただき
mototyoさんninjaさんとご対面することができました。

実はninjaさんとお会いするのはその日がはじめてでしたが
演奏会が始める前から私の右後方斜めから視線を感じていました。
その視線の主がninja さんでした。
休憩中に4人でしばし談笑。

休憩後にいよいよバッハ無伴奏5番がはじまりました。
私は気がつかなかったのですが、A線をGにしてオリジナルの
譜面で演奏されていたようです。

5番は大好きです。
重厚で内省的なプレリュード、神秘的なサラバンド
それにプレリュードとは対照的に単純なジーグ。
5番を聞きながら、いろいろな光景を思いうかべて
ブルネロのつくりだす音の世界に浸っていました。
そして
終曲のジーグがあっけなく終わってしまいました。

全体の曲の構成からうけた当夜の演奏をききながら
思い浮かべた言葉は
「回想」。

これまでの人生のさまざまな思い出や記憶が
ブルネロのチェロを聴きながらフラッシュバックしていました。

アンコールは2曲。
1曲目はソッリマのコンチェルト「ロトンド」から
2曲目はカサドの無伴奏チェロソナタから

アンコールでは、がらっと雰囲気がかわり
超絶技巧のオンパレード。まさにチェロとブルネロが一体となって
音楽を語りかける。そんな至福の時間でした。

明日の夜は紀尾井ホールで
紀尾井シンフォニエッタと競演。
ブルネロの弾き振りで
ロータのチェロ協奏曲2番を聞きます。
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by hideonoshogai | 2007-10-12 15:15 | チェロ | Comments(7)  

Commented by ぶんちゃん at 2007-10-12 18:35 x
ショックから立ち直ったんですね(笑

読んでるだけで、鳥肌立ちそうですね。
いつかTVで放送される日が楽しみです。

よくお名前を拝見する方々とは、
このブログがきっかけでお知り合いになったんですか?
チェロを通して、こういった出会いやつながりができる、って
すごくステキなことだと思います。
Commented by ninja at 2007-10-12 22:06 x
右うしろ斜めからじっと、チラチラ見てました、実は。
だって、以前メロンで拝見した時は、何しろTシャツ姿でしたし、うしろからでしたから、ちょっとすぐには判断できませんでした。でもほぼ自信はあったのですが。。。
mototさんからは<指差してゲラゲラ笑わないように>と言われてましたし、おとなしくしてたつもりです(笑)
ブルネロのプログラムの作り方とか、細やかに作曲家の気持ちとか考えているようで、それでいてその表し方が自然で、好きですね。
二月の紀尾井の時、未完のルクーの曲のあと、しばらく動かなかった事思い出しました。
今回のツィマーマンの後のバッハの弾き方といい、ブルネロが指揮をしたがる気持ちわかるような気がしました。
ファンとしては指揮よりもっともっと演奏をしてほしいのだけれど。。
明日も又会えるのですね、ブルネロに。いいな~。
mototさん、無事高松からお帰りかしら?おみ足、お大事にネ。
Commented by hideonoshogai at 2007-10-12 23:57
ぶんちゃんさま、こんばんは。
ショックから立ち直ったというよりも、明日またブルネロを聞くので
先日と明日の印象がごっちゃにならないうちに書かなきゃ。。
というのが本当のところです。

ほんとTVでの放映が今から楽しみです。
舞台右手に設置してあった無人カメラがどうも自分のほうを撮っているようにカメラ視線を感じまた。前から4列目なので、ひょっとしたら映っているかも知れません。

はいトリフォニーでお会いした方々は、みなこのブログにカキコミされてくださるチェロ仲間です。自分は最初ブログ開設しておらず、ずっとcello-rinさんのところに書き込んでました。今年の2月に
cello-rin さんに背中押されてブログはじめたんです。

今年の6月にcello-rinさんと自分が呼びかけて東京でブログ仲間8人でアンサンブルしました。
7月には大阪でcello-rin さんが大阪チェロを6人でやりました。
「第2回大阪チェロ」もまたそのうち開かれると思いますよ。
ぶんちゃんさまも、是非、第2回大阪チェロに参加されてみては如何でしょうか。みんなチェロのことが大好きなひとばかりですから
すごく盛り上がり面白いです。
Commented by hideonoshogai at 2007-10-13 00:02
ninja姉、この人だ、と確信があってもいざ一対一で声かけるのは勇気がいりますよね。

明日は墨田トリフォニーとはまた違ったブルネロをみることができるのではないかと楽しみにしています。
アンコールでオケ伴奏でLa Wally でも弾いてくれた最高なんですが。。
明日はチェロのMさんもしっかりみてきますね。
Commented by ぱぶりーと at 2007-10-13 00:49 x
印象記 拝読しました。すばらしい体験をなさいましたね。

田舎に住んでいるとなかなか 機会にめぐりあいません。

読んで いったつもり というところでしょうか

私はバッハの無伴奏の中では 5番のサラバンドが一番すきです。
回想という言葉もあてはまるでしょうし 無常という言葉がこの曲には近い気がします。

トリフォニーには 彫刻家の船越桂さんのオブジェがありますよね ブルネロさんの後にちょっと 写ってましたが、 それもぜひみてみみたいものです。
Commented by ninja at 2007-10-13 01:43 x
思わず目が行きましたが、船越桂さんの作品だったのですね、あの木彫りのピアニスト。
確か山本容子さんの作品もあったはず。小ホールのホワイエの方でしょうか?
次は少し早めに行って芸術作品も鑑賞したいと思います。
Commented by hideonoshogai at 2007-10-13 11:01
ぱぶりーとさま、おはようございます。

あのオブジェが堀越 桂さんの作品とは知りませんでした。
2003年にブリュッセルの楽器博物館を見学したことがありますが、その入り口にやはり木造のフルートを吹く男性のオブジェが
あり、それが、トリフォニーのオブジェにとても感じが似ていて驚いたことがあります。

5番のサラバンドは、私も好きです。「無常」という言葉もぴったりですね。

ninja 姉、ではこんどトリフォニーにいらっしゃる時には、芸術鑑賞の時間もつくりましょうか。小ホールはいったことがないので山本容子さんの作品のことは知りませんでした。

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