悔い
これまでにもう5回チェロを弾いています。
演奏するのは誰でも良く知っている曲。
すぐに口ずさめる曲ということでクラシックの小品よりもむしろ
(日本の)童謡や歌謡曲が中心です。
譜面は一見簡単そうですが事前にピアノとの合わせはなく、
ほとんどぶっつけ本番に近いのでいつもヒヤヒヤです。
短い曲を全部で10から12曲ぐらい弾きますが必ずチェロのソロも2,3曲入れます。
聴いてくださるのは多くても10名ほどですが弾くたびごとに毎回新たな発見があり
何かしら手ごたえを感じています。
私のようなものが弾く拙い演奏を皆さんが真剣にきいてくださるのはほんとうに有難いことです。
先週は、中島みゆきの「糸」を是非弾いて欲しいとのリクエストがMさんの御家族からあり
演奏前日の夕方に急遽譜面をいただきました。
それから練習する時間的余裕もなくボーカルパートはとても初見では無理なので
当日はピアノ伴奏パートをピアノと一緒にゆっくりと一音一音心を込めて弾いていきました。
「糸」が大好きなMさんは意識がほとんどなく私のまん前でベッド上にずっと臥床したまま演奏を聴いていました。
演奏をはじめてからしばらくすると、それまで、ずっと呼名反応もなかったMさんの瞼が大きく開いたのには驚きました。
しかし、残念ながら、演奏の翌々日にMさんのお姿はもうありませんでした。
その日は何故か集中力が一瞬ふっと途切れるときがあり
バッハの無伴奏もこれまでの演奏に比べ凡ミスが多かった。
私の弾いたチェロがMさんが最後に聴いた音楽だったかと思うと
言葉がありません。
もう少しだけちゃんと弾いてあげられればよかった。
by hideonoshogai | 2012-03-06 20:55 | 音楽療法 | Comments(5)
hideoさんのチェロの音色で懐かしいこと楽しかったことを思い出して,しみじみと気持ちがほぐれていらっしゃったのでしょうね。
いつか弱ってしまったら,hideoさんのような潤いのある先生にお世話になりたいモノです。
>チェロ右衛門さん、
コメントどうもありがとうございます。
Mさんが喜んでくださったとは思いたいのですが・・
瞼を開ける動作は、とても驚いた場合にも起こりうるわけで・・
Mさんにとって私のチェロの音がノイズでなかったことを願うばかりです。
Mさん、きっとチェロの音に満足されたのではないでしょうか。最期にいい音楽に浸ることが安らぎとなったことと思います。感謝のお気持ちで開眼されたのかもしれませんね。
記事を拝見して、やさしい気持ちになれました。ありがとうございました。